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薬局製剤・調剤実習

煎じ薬、丸剤、軟膏剤などを実際に作ってみましょう!

2023(令和5)年度 漢方薬局製剤実習講座が開催されました!
令和5年度も昨年と同じ会場、東京薬科大学・八王子キャンパスにて、昼12:30より開催されました。
薬剤師の方、登録販売員の方など、参加受講生64名(+役員)となりました。

<軟膏:紫雲膏>
今回は漢方の代表的な外用軟膏「紫雲膏」の製剤を実習しました。紫雲膏は、江戸時代の医師、華岡青洲が、中国明代の「潤肌膏」(じゅんきこう)を元に、豚脂を加える等の改良を施した処方とされます。

1)実習の手順とポイント
八木学術委員より、具体的詳細な実習手順のレクチャーを受けています。
2)ゴマ油の秤量、加熱
日本薬局方ゴマ油を鍋で加熱します。120℃で油中の残留水分を除去します。油の1滴を冷水に滴下したとき、水面に散らずに球形にまとまれば、水分が除去されたと判断できます。
3)生薬の秤量
ミツロウ(黄蝋)、シコン、トウキ、豚脂(奇数班のみ)を準備。なお豚脂については下記の(注)も参照してください。
4)ミツロウ、豚脂を溶解
100℃まで温度を下げたゴマ油に、ミツロウを塊にならないように加え、完全に溶かします。ついで豚脂を溶かします。
5)トウキおよびシコンの抽出
140℃まで加温してトウキを加え、油で揚げるように抽出、次いで120-130℃を保ちながらシコンを加え、油中へ成分を抽出します。
細かい泡が生じるので、吹きこぼれに注意します。温度管理のため棒温度計を挿しておきますが、温度計で撹拌することは禁止です。
6)濾過
火(電熱器)から下ろし、ボウルにガーゼを張って、残滓(固形成分)が混入しないよう濾します。
油なので湯気が立ちませんが、100℃を超えているので、火傷しないように慎重に行いましょう。
7)冷却、撹拌
冷水濡れタオルにボウルを乗せ、急速冷却しながら、均一に撹拌・混和します。タオルがぬるくなったら再び冷水で絞って、冷たい状態を保ちます。
8)練合、容器充填
収量を測定後、軟膏板上で練って脱気します。製造後、隙間を残さないように充填します。
添付文書、ラベル、製造記録書なども速やかに作成し完備します。問合せ先なども記載しておきましょう。
9)確認試験
紫雲膏を少量取り、ジエチルエーテルおよび水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を加え、試験管の底の方(水層)が青色を呈色することを確認します。これがシコン成分の確認試験となります。
なお、経年した紫雲膏では、外観上は同じように見えても、本試験で青色を呈色せず、使用に適さないことが判明する場合もあります。
(注)豚脂について
日本薬局方規格の豚脂は、一般に小口で流通しておりません。製薬企業の工場では油脂メーカー等との契約によって、専用に製造された局方豚脂の供給を受けて稼働していますが、薬局製剤のロット規模では事実上入手不可能という実情があります。 これについて日本薬剤師会の薬局製剤・漢方検討会では、食品として流通するラードを使用した紫雲膏、および豚脂不使用の紫雲膏の承認を求めています。【日本漢方協会通信 2019年5月号を参照】
今回の製剤実習においては、奇数班は食品のラードを代用、偶数班は豚脂を配剤しない紫雲膏(=潤肌膏)を製剤いたしました。
 

薬局製剤は、市販にない製剤・剤形や多品種少量生産、使用期限の短いものを迅速に提供でき、提供後の追跡調査もしやすいなど、きめ細かな製剤を実現するとともに、漢方の伝統を守り薬局の価値と信頼度を上げ、患者さんと薬局との距離をいっそう緊密にできるツールです。今日の実習で得たものを元に、さらに各自の創意工夫を加えて、薬局製剤の発展に寄与されることを願っております。


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